ポスティングで米メジャーリーグへ移籍する球界のエース達の系譜_菅野智之アメリカへ

2020年シーズンオフ、巨人の菅野智之投手がポスティングシステムによってアメリカ・メジャリーグへの移籍を目指すことになりました。

新型コロナウィルス影響で例年とは異なる不透明な状況下ではありますが、個人的には彼ほどの実力者であればしっかりとした契約を勝ち取れるのではないかと思っています。

最近の日本プロ野球では数年に一度訪れる「球界のエース」級投手の米メジャーリーグ移籍に連なるものと思います。

 

現行制度では海外FA権の取得は実働9年

FA移籍であれば制度で決まっていることで、取得した権利を行使するだけなので、それほど語ることはありません。

対して、最近の大エースのメジャー移籍はポスティング制度によるものが多い印象なので、少しまとめてみたいと考えました。

以下、敬称略。

過去ポスティングで米メジャーリーグへ移籍した「球界のエース級」投手

下表、ざっくり2010年代以降ということになります。

尚「球界のエース」の線引は完全なる独断ですので悪しからず。

選手 MLB

デビュー

NPB

所属球団

NPB

在籍

NPB

実働

移籍方法 プロ入り

経歴

ダルビッシュ 有 2012年 日ハム 7年 7年 ポスティング 高卒
田中 将大 2014年 楽天 7年 7年 ポスティング 高卒
前田 健太 2016年 広島 9年 8年 ポスティング 高卒
大谷 翔平 2018年 日ハム 5年 5年 ポスティング 高卒
有原 航平 (2021年) 日ハム 6年 6年 ポスティング 大卒
菅野 智之 (2021年) 巨人 8年 8年 ポスティング 大卒

20年シーズンオフ、菅野と同じタイミングでメジャー移籍となる予定の有原も加えておきます。

このダルビッシュのひとり前の選手を挙げるならば、2007年MLBデビューの松坂大輔になるのでしょう。

ダルビッシュ・田中・マエケン →「卒業」パターン

押しも押されぬエースとして複数年に渡り活躍を続け、日本で文句のない成績を残して、米メジャーリーグ挑戦、のパターン。特に前者2人でしょうか。

海外FA権取得まで1〜2年を残してポスティングで移籍、というのがひとつのトレンドになっているようです。

マエケンは高卒一年目の年は一軍登板がなかったため、在籍と実働が1年ずれています。

FAと違いポスティングであれば日本側の所属球団にもお金が入ることもあるでしょう。

またこのパターンは優れた成績を残し続けた結果、チーム内での年俸のバランスが崩れてくることも要因のひとつにあるようです。このあたりはダルビッシュが自身のYou Tubeチャンネルでも語っていました。

結局は、周りの空気を読んだと。

参考 「メジャーに行くぐらいなら野球をやめる」はずの青年がメジャーに行った理由。ダルビッシュ有Yu Darvish - YouTube

大谷は特殊事例

彼の場合は世にも稀な「二刀流」選手ですが、渡米時点で「球界のエース」級として挙げることに全く躊躇いはありません。

上記選手でNPB在籍・実働が5年と最も短いのが大谷です。

高卒で直接メジャー挑戦する意志を表明していながら日本ハムがドラフトで強行指名をして口説き落とした経緯のある大谷は、入団時点で近い将来のメジャー移籍は既定路線(条件)だったと思われます。

短い在籍期間で日本球界に無二のインパクトと実績を残しました。

ガンバレ。

有原は、早い

菅野と同じ20年オフシーズンにメジャーリーグ移籍を目指すこととなり、20年12月下旬に一足先にテキサス・レンジャーズと合意したのが、日本ハムの有原。

在籍・実働6年でのポスティング移籍は、上表での比較からもわかるようにかなり早いと言えるでしょう。ダルビッシュ・田中マー君ですら同7年ですから。

ポスティング移籍が認められるどうかは在籍球団次第。日本ハムという、ポスティング移籍に比較的寛容な「去る者追わず」の球団に所属していたことも、有原の希望に味方したでしょう。

あとは上記4名と違うのが大卒入団選手である点。在籍・実働は6年ですが、大学の分+4年であり、年齢的にはそれほど早いわけではないことになります。

合理的な日本ハム球団としては、年齢的に20代後半のこの辺が売りどきという判断もあったか。

まあ、有原のポスティングで球団に入るお金も契約総額の20%で1億数千万円程度と報じられているし、それは邪推ですかね。

そして菅野智之の場合

菅野のポスティング移籍は、ダルビッシュや田中将大と同様、「卒業」パターンと言えるでしょう。

圧倒的な成績を残し、
年俸は日本球界の天井付近まで上がり切り(推定6.5億円)、
海外FA権取得まであと1シーズンというタイミングで、
ポスティングで米メジャーリーグ挑戦。

「典型的」に見えますが、菅野のケースが少し違うのが、巨人という基本的に生え抜き選手のポスティング移籍を認めてこなかった球団からの移籍である点でしょう。

巨人が菅野のポスティング申請を発表した際のコメントに下記の文言がありました。

大学卒業から1年間、巨人軍のドラフト指名を待ったために浪人生活を送りました。当球団としては、これらの事情を考慮し海外FAの取得前にMLB球団の話を直接聞きたいという本人の思いを受け入れました。

菅野は11年ドラフトで1位指名で交渉権を獲得した日本ハムへの入団を拒否し、巨人入りのために1年浪人した経緯があります。

もしこのことがなくストレートに巨人に入団していれば20年シーズンで在籍・実働9年=海外FAを取得している年。実績に加えてそういう配慮が巨人側にあったということです。

次の候補者は、、ソフトバンク・千賀?

菅野が20年シーズンを最後に渡米して、次のメジャー志向の「球界のエース」級ピッチャーというと、、
結論から先に言うと、筆頭はソフトバンクの千賀滉大投手ではないでしょうか。

20年シーズンの千賀は、最多勝・最優秀防御率・奪三振王の投手3冠に、パ・リーグベストナイン。チームはリーグ優勝に、4年連続日本一。

獲れるもんすべて獲った感。メジャー志向の強い本人にしたら、これでダメならどうすりゃいいのという心境でしょうか。

20年シーズンオフの契約更改交渉で、改めて球団にポスティングによる米メジャーリーグ挑戦を希望するも、ソフトバンク球団の答えはNO。千賀も渋い顔。

同学年で、決して自分が実績で負けているわけではない有原が上記の通り在籍6年でポスティング移籍を果たしたことも、もどかしさに拍車をかけているかもしません。

千賀が海外FA権を取得するのは最速で22年シーズン。

2年後のFA移籍の機会を待つことになるのか、先輩方と同じ道を辿り権利取得1シーズン前の21年オフに念願叶ってポスティングでの移籍が実現するのか。注目ですね。

終わりに

菅野のポスティング移籍の交渉期限は、日本時間で21年1月8日朝。

どういう結果になるか、楽しみですね。

→追記:菅野は巨人残留が決定!

なんと、上記ポスティングの交渉期限までに米メジャー球団と合意に至らず、菅野は21年シーズンもNPB巨人に残留することになりました。

21年オフの海外FAでの米メジャー移籍、というルートが有力です。

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