2019年(平成31年)3月21日、アメリカメジャーリーグ シアトル・マリナーズなどで活躍したイチロー選手が現役を引退しました。
45歳での引退となりました。
本記事の前編として、現役最終戦となった試合から会見前までの様子をまとめています。
イチロー引退の日 ①現役ラストゲームこの記事では引退会見での出来事についてご紹介します。
いやあ、会見長かった。(→約85分間)
そして開始も遅かった。(→23時56分開始)
翌日は平日。(→金曜日)
でも見ないわけにはいかぬとテレビにかじり付いて見ていました。
押しも押されぬ「超」の付く名選手の引退です。
会見内容の幹の部分は当然様々なメディアで取り上げられています。
この記事では、枝葉かもしれませんが私がちょっと興味を惹かれた話題を扱いたいと思います。
会見の全文はこちら(▼)
参考 “イチロー節”全開、85分間の引退会見 一問一答ノーカット「孤独感は全くない」Full-Count目次
会見冒頭の大事な部分で中継終了にビックリ
私は日テレ地上波の「news zero」にチャンネルを合わせてイチローの会見が始まるのを待っていました。
日付も変わろうかという23時56分に開始となった異例の時間帯の会見。
会見冒頭、イチロー本人の口から引退を宣言する一番大事な部分で中継が突然終了してしまい、このことが話題になっていました。私も慌てました。
イチロー選手は「遅い時間にお集まりいただいてありがとうございます」とあいさつ。間を置きながら、「現役生活に終止符を打ち、引退することと……」と核心部分に入ったが、その瞬間にブツリと中継が途絶えてしまった。
引用:Business Journal「イチロー引退会見、話し始めた直後に中継終了→バラエティ告知の日テレに批判殺到」
イチローが「引退」の事実をどのように告げるのか、個人的に興味がありました。
というのも、試合中にネットで見かけた第一報が「イチローが第一線退く意向」というものでした。
ふつうは現役引退を指す、わかると言えばわかるんだけど、「第一線」って何だろうって、思いませんか?
じゃあ「第二線か三線」くらいでは引き続き活躍するのだろうか。そもそも第二線ってなに?とか。
なんだかモヤッとした表現だなと、感じていました。
イチロー自身常々最低50歳まで現役でプレーすると公言していた人でしたし。
なので、この冒頭の核心部分での中継ブツ切れには慌てました。素直に初めからBS日テレで見ていればよかった。。
結果としてはイチローは、
「現役生活に終止符を打ち、引退することとなりました。」
と明快にはっきりと引退を口にしました。
プレーとともにその発する言葉でも注目を集めてきたイチロー。
「第一線を退く」などという半端な言葉は選ばなかったわけです。さすが。
イチロー「チェンが元気か知りたいですね」にチェンがFacebookで返答
台湾メディアの人からの質問。
「何か台湾の人に伝えたいことはありませんか?」
そんなことを聞かれてもイチローも困るわけです。
この質問にイチローがひねり出した返答が、
「チェンが元気か知りたいですね」「チェンは元気にやってますかね?」 でした。
“チェン”とは、日本プロ野球の中日ドラゴンズでも活躍した台湾出身のチェン・ウェイン投手のこと。
イチローがマイアミ・マーリンズに所属していた2016,17年の2シーズン、二人はチームメイトでした。
この質疑には後日談があり、会見でのイチローのコメントに対して、チェンが自身のFacebookでこう回答しています。
「イチローさん、僕は元気です。」
二人が一緒に収まった写真とともに、日本プロ野球経験者らしく日本語でイチローへ惜別のメッセージを送っています。
今や超高給取りのチェンですが、近年はマーリンズに移籍したあたりから、思うような成績が残せていない様子です。
こうして日本のヒーローへ日本語でメッセージを送る姿を見ると、チェンにももうひと踏ん張りして活躍してもらいたくなりますね。
参考 「イチローさん、僕は元気です」―元中日チェンが引退レジェンドに感謝Full Countイチローが回答を避けた質問「打席内での感覚の変化」
引退会見の中で、おそらく唯一、イチローが回答を避けた質問がありました。
「打席内での感覚の変化は今年は何かあったのか?」という質問です。
記者が質問し終わるかどうかのタイミングで食い気味にこう返しました。
「いる? それここで。いる? 裏で話そう、後で。裏で」
これで終わり。つまり回答拒否、質問としては却下されてしまったわけです。
私の記憶の限りですが、内容の重複などを除いて回答拒否はこの質問が唯一だったのではないかと思います。
おそらく質問をした朝日新聞の記者さんもバツの悪い思いをしたでしょう。
ん?というものも含めて色々な質・内容の質問が出た会見でしたが、私はこれはそんなに変な質問(失礼だったり的外れだったり)だとは思いませんでした。むしろどちらかというとイチローの口から聞いてみたかった内容です。
本人的にバッティングの感覚って実際どうだったのか?
現役中に必死に前を向いて戦っている最中に聞くのは憚られるかもしれないが、引退を決めたこのときだからこそ本音を聞いてみたかったところ。
でも彼は答えませんでした。
プロ野球/ベースボールの歴史上、世界で誰よりもヒットを打ってきた男があれだけ打てなくなったわけです。
感覚に変化があったのかと問われれば、それはそれはエゲツないほどあったものと思っています。もちろん悪い方に。
イチローは、答えるならば嘘は言いたくないし言えない人なのだと思います。
だから、回答することを避けた。
バッティングの感覚には大いに狂いがあったこと(そしてそれがどうやら戻らないであろうこと)を、引退を決めてもなお口にしたくなかった、ような気がしました。
「それを おれに ここで 言わせるな」と。
実際のところは本人のみが知るところで、これは個人の想像・感想です。
会見の中のとても短い時間のことでしたが、この質疑は興味深かったです。
「小林君」が会見のアノときの心境を語る
リアルタイムで最後まで引退会見を見ていた人は、ある一人の記者の名前を覚えているのではないでしょうか。
「小林君」です。
会見の最終盤、司会者から「質問はあと2つ」と宣言された場面で質問に立ったものの、イチローに内容の重複を指摘され、実名を挙げてたしなめられてしまった記者の方です。
「これ、先ほどお話しましたよね。小林君もちょっと集中力切れてるんじゃないの? 完全にその話したよね。ほらそれで1問減ってしまうんだから」
「小林君って誰?」 私を含む多くの人はそう思ったと思います。
デイリースポーツの記者さんで、イチロー担当だった方なのだそうです。
君付けですがイチローより3歳年上とのこと。
あれだけ注目度の高い会見の場で、まあ、、もし自分だったらと思うと冷や汗が出ますよね。
そのデイリー小林記者が、会見のこの場面の心境を記事で語っていました。
全身の血の気が引いた。毛穴という毛穴から汗が噴き出た。会見の空気をぶち壊した申し訳なさ、自分自身への不甲斐なさ、恥ずかしさ。担当19年の時間は何だったのか。気が遠くなりそうになる自分がいた。
でしょうねえ。。
以前から、報道陣にもプロ意識を求め、緊張感のある関係でいたいという主旨の話をしていたイチロー、容赦ないなあ。
終わりに
イチローの引退会見の質問内容については手厳しい意見も多くあったようです。
歴史的名選手の引退なんだからそれなりの質問をせーよ、という意見はごもっとも。
ただ、その日の試合中に会見が行われることが発表されて、23時頃まで試合をやって、試合後の感動の場内パレードがあって、24時前から会見です。
報道陣の質問にも良くも悪くも事前に用意していなかった感じが出ていて、逆に「ライブ感」みたいなものが感じられて私はおもしろく会見を観戦しました。
この日3月21日は祝日の木曜日、次の日は金曜平日ですからね。
午前1時20分近くの会見終了まで付き合うのはなかなかキツイものがありました。
深夜の時間帯に饒舌なイチロー。
「イチロー節全開」とか色々言われていましたが、
この会見の様子を表現したもので私が最もしっくりきたのは「イチロー・スズキのオールナイトニッポン」です。
とっても「らしい」選手としての最期でした。